2025年10月29日、著名な医学誌であるLancetから、気候変動と健康に関する最新の報告書である「Lancet Countdown 2025」が公表されました。同報告書では、気候変動が世界の健康に与える影響がかつてないレベルに達していることが明らかになりました。

例えば、2024年は観測史上最も暑い年となり、生命を脅かす熱波日数の84%が気候変動に起因すると推計されています。熱関連死は年間平均約54万6000人と、1990年代以降で23％増加したとされています、また、干ばつや豪雨などの極端気象は、世界の陸地の6割以上で増加し、山火事由来の大気汚染による死亡者は過去最多の15万4000人と報告されています。

加えて、同報告書は、気候変動が社会・経済にも深刻な影響を及ぼしていることを指摘しています。例えば、2024年の暑熱曝露による労働損失は6,390億時間、所得換算で1兆900億ドルに達したとされ、2018年度の報告書と比較すると約5倍に増加しています。また、気候関連損害の経済負担は保険で吸収しきれず、その他の要因とも相まって医療制度に負担をかけ、社会不安や紛争の増加につながるとされています。

同報告書は、気候変動が環境を通じて人々の健康や社会経済などに深刻な影響を及ぼしていることを包括的に示すものであり、プラネタリーヘルスの観点からも重要な資料といえます。