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プラネタリーヘルスに関する最新の動向をお伝えします

プラスチック条約を巡る交渉、合意に至らず

2025.08.19

国連環境計画(UNEP)主導のプラスチック汚染に関する政府間交渉委員会(INC)第5会期再開会合(INC5.2)が、8月5日から15日までの期間、ジュネーブの国連欧州本部で開催されました。法的拘束力を持つ国際条約の策定を目指しましたが、各国の立場の隔たりが埋まらず合意に至らないまま閉幕しました。

交渉では、プラスチック規制のアプローチを巡って各国の立場が大きく分かれました。EU諸国や小島嶼開発途上国など100超の国はプラスチック生産量の上限設定など厳格な規制を求めた一方、サウジアラビア、ロシアなどの産油・産ガス国や主要生産国の一部は生産規制の対象外とし、再使用・リサイクル中心の取り組みを主張しました。対立は激しく、議長提示の妥協案を次回交渉の基礎とする合意すらできず、再開時期や形式は不透明です。

プラネタリーヘルスの観点を踏まえると、今回の停滞は単なる環境交渉の失敗ではありません。マイクロプラスチックは生態系全体で検出され、人体の様々な場所への侵入も確認されており、健康への影響に関する科学的懸念が急速に高まっています。INCの交渉過程でもこうしたプラスチック汚染による健康リスクへの懸念が示され、上述の議長案にも健康への影響が複数箇所で明記されるなど、国際的な重要課題として認識されています。

次回会合の見通しは立っていませんが、国際的な議論が継続する可能性は高いといえます。一方、プラスチック汚染問題の解決に時間的猶予がないことから、国際的な議論に加え、各国政府の政策対応や企業での自主的取り組みも含めた多層的な議論や施策の展開も重要性を増しそうです。