EAT-Lancet委員会、食料システムに関する新たな報告書を公表
健康かつ持続可能な食料システムに関する科学的な目標値を議論する EAT-Lancet 委員会 は、2025年10月2日に新たな報告書である”The EAT–Lancet Commission on healthy, sustainable, and just food systems”を公表しました。同委員会は、2019年に公表した報告書の中で、地球環境と健康双方に配慮した食事法として、プラネタリーヘルス・ダイエットを提唱しました。今回の報告書では、新たに公平性を柱の1つに据え、健康、持続可能かつ公正な食事法と食料生産システムについて様々な議論が展開されています。
その1つとして、プラネタリーヘルス・ダイエットに関するアップデートが挙げられます。直近のエビデンスを基に、プラネタリーヘルス・ダイエットを支える理論的基盤が強化され、各食品の推奨摂取量等もわずかながら修正されました。本報告書でも、プラネタリーヘルス・ダイエットが地球環境と健康双方に利点の大きい食事法であることに変わりありませんが、一部地域での大規模な追跡調査が不足していることから、具体的な地域・地域別のガイダンスを提供するためには、データの入手可能性と質の向上が必要であるとも指摘されています。
また、今回の報告書では、健康、持続可能かつ公正な食料システムを達成するための8つの優先策と21のアクションがまとめられており、各アクションが健康・環境・正義に与えるインパクトについても併せて整理されています。例えば、優先策の1つである「健康な食事へのシフト」には、①健康的な食品の価格競争力を高める、②不健康な食品への警告表示規制を設ける、③社会保障手段を用いて貧困層の購買力を向上させる、という3つのアクションが示され、①②は健康・環境に、③は健康・環境・正義に大きな潜在的インパクトがあるとされています。
本報告は、プラネタリーヘルスの主要分野の一つであるアグリ・フード領域における重要な資料として、今後の政策・研究・実践に広く参照されることが期待されます。特に、プラネタリーヘルス・ダイエットに関連したエビデンスの整理や、新たに公正の観点も踏まえたフードシステムの構築に向けたアクションのあり方を整理する場面などで活用できるものと思われます。