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プラネタリーヘルスに関する最新の動向をお伝えします

国際司法裁判所、気候変動に関する諮問意見を発表

2025.07.30

国際司法裁判所(ICJ)は2025年7月23日、「気候変動に関する国家の義務(Obligations of States in respect of Climate Change)」と題する諮問意見(Advisory Opinion)を公表しました。国際司法機関では、7月3日に米州人権裁判所からも同様の諮問意見が公表されていましたが、それに続く見解表明となります。

同意見では、気候変動に対して国家が負う義務について、国連憲章のほか、気候変動関連条約等の環境条約、国際人権法などを含む国際法体系全体から決定されるとしました。その上で「クリーンで健康かつ持続可能な環境の権利 (right to a clean, healthy and sustainable environment)」は、国際人権法上、人権を享受するための不可欠な権利であると位置付け、国家は、気候変動・環境保護のための緩和・適応措置を始めとした必要な措置を講じる義務を負うとしました。そして、当該義務が履行されない場合、国家は当該違法行為の中止(cessation of wrongful acts)義務や損害賠償(full reparation) 義務などの国際法上の責任を負うとしました。

諮問意見の中では、WHOやIPCCなどの国際機関における気候変動と健康に関する取組みや科学的知見について説明する中で、プラネタリーヘルスに言及する箇所もありました。上述のとおり、諮問意見は、個人が「クリーンで健康かつ持続可能な環境の権利」を有することを示しており、地球環境と人間の健康が密接に結びつくことを重視するプラネタリーヘルスの考え方とも合致します。ICJの諮問意見に法的な拘束力はありませんが、その影響力を踏まえると、各国政府・企業が気候変動対策や気候変動訴訟を巡る各国裁判所の判断に影響を及ぼす可能性があるため、動向を注視する必要がありそうです。