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プラネタリーヘルスの各トピックに関する知見を紹介します

緑地の存在が健康に与え得る影響について

2024.09.15

都市化が進む現代社会において、緑地は、私たちの健康と福祉において重要な役割を果たしています。研究が進むにつれ、緑地の存在が身体的・精神的健康にどのような影響を与えるかが明らかになりつつあります。本記事では、最新の研究に基づいて、緑地が健康に与える影響について、いくつか研究成果を紹介するとともに、日本での緑地保全・確保の取組みについても概説します。

緑地とメンタルヘルス

都市部や農村部における高齢者のうつ病リスクに対する緑地の影響を調査した研究によると、特定の種類の緑地が精神的健康に大きな影響を与えることが示されています。日本における高齢者を対象とした大規模調査(JAGES)のデータを分析した研究では、都市と農村の環境によって緑地が異なる影響を与えることを明らかにしました。この研究によれば、都市部の高齢者にとって、公園や庭園といった整備された緑地がうつ病リスクの低減に効果的である一方で、農村部では自然な森林や農地が同様の効果を発揮することが確認されています。筆者らは、都市部と農村部の環境や生活習慣の違いに起因すると分析しているようです。

緑地の形態と健康効果

緑地の形態や配置が健康に与える影響についても、重要な知見が得られています。ある研究では、さまざまな形態の緑地が身体的・精神的健康に与える影響を分析し、特定の形態や配置が健康効果を最大化する可能性があることが示唆されています。例えば、街区公園や歩行可能な緑道のような、人々がアクセスしやすい形態の緑地は、身体活動を促進し、心血管疾患や肥満のリスクを低減する効果があります。また、都市部における小規模な緑地や植栽は、精神的なリフレッシュ効果を高め、ストレスの軽減や精神的な安定をもたらすことが確認されています。このように、どのような形態の緑地をどこに配置するかによって、その健康効果が大きく変わることが分かります。

緑地と認知症リスク

認知症の予防にも緑地が重要な役割を果たしていることが、アメリカの研究で示されています。具体的には、地域レベルでの緑地の広がりが、住民の認知機能にプラスの影響を与える可能性を示しており、特に、高齢者が日常的にアクセスできる緑地が豊富な地域では、アルツハイマー病の発症リスクが低下する傾向が見られました。筆者らは、この効果は、緑地がストレスを軽減し、身体活動を促進することで、認知機能の維持に寄与することによるものと分析しているようです。

日本での取組み

日本においても、街づくりの中で緑地の確保と健康との結びつきを意識した取組が進められています。国土交通省は、まちづくりGXとして、緑地の保全及び緑化の推進を掲げています。2024年5月には都市緑地法等の一部を改正する法律が公布され、気候変動対策や生物多様性の確保、幸福度(Well-being)の向上等の課題解決に向けて、都市において緑地の質・量両面での確保等を推し進めるための施策が規定されました。同法に基づいて、都市における緑地の保全及び緑化の推進に関する基本的な方針を策定するための有識者会議が開催されており、今後の動きが注目されます。

まとめ

以上のように、緑地の存在は、私たちの身体的・精神的健康に多大な影響を与え得ることが複数の研究で示唆されています。このようなエビデンスをもとに、都市計画や公衆衛生政策において、健康的な街づくりを実施に当たって緑地の設置やその具体的な配置などが進められることが期待されます。