日本政府、VNR報告書で「プラネタリーヘルス」を明記
2025年6月10日、内閣官房・外務省より「SDGsに関する自発的国家レビュー(VNR)報告書」が公表されました。VNR報告書は、日本がSDGs達成に向けて取り組むべき課題や成果について包括的に評価したものです。報告書内では、プラネタリーヘルスへの言及が2箇所確認されました(いずれもVNR報告書79頁)。
1箇所目は、重点事項の一つである地球規模の主要課題への取り組み強化に関する諸施策を紹介した後、「気候変動や生物多様性が健康に関わり合うという『プラネタリーヘルス』の考え方も踏まえ、個々の地球規模課題間の相互連関に十分に留意する必要がある」と記載された部分です。この記述は、地球環境問題が相互にもたらす関連性について、プラネタリーヘルスの観点が重要であることを示唆しています。
2箇所目は、第6次環境基本計画において循環共生型社会の概念が採用されたことに関し、「地球の健康(地球環境の健全性)と人の健康は一体不可分であるという『プラネタリーヘルス』に関する議論が活発化」しているとの記載が盛り込まれました。この記述や前後の記載を踏まえると、プラネタリーヘルスに関する議論が活発化していることに加えて、環境(資本)が経済社会活動の基盤であることを説明するフレームワークとして、プラネタリーヘルスを位置付ていることがうかがわれます。
このように、VNR報告書へとプラネタリーヘルスが明記されたことは、日本が国際社会に対し、プラネタリーヘルスを政策的に取り入れ、健康と環境の統合的な課題解決に取り組む姿勢を示したものと捉えることができます。現段階では抽象的な記述に留まっており、具体的な政策への展開可能性は不透明ですが、今後の政府によるSDGs関連施策にプラネタリーヘルスがどのように反映されていくか、その動向を注視していく必要があります。