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プラネタリーヘルスに関する最新の動向をお伝えします

消費者庁がミネラルウォーター類におけるPFOS・PFOAの基準値案を発表

2025.03.08

2025年2月26日、消費者庁は、ミネラルウォーター類の製造等の方法の基準又は成分の規格(規格基準)として、有機フッ素化合物の一種であるPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)の上限値を設定する同基準の改正案を公表しました。同庁は2025年3月27日までパブリックコメントを募集し、2025年度内の施行が予定されています。

PFOSとPFOAは「永遠の化学物質(Forever Chemicals)」とも呼ばれる有機フッ素化合物(いわゆるPFAS)の一種で、化学的に安定していることから自然環境中での分解が極めて遅く、生物の体内に蓄積しやすい特性を持っているとされています。これらの物質は撥水性や耐熱性に優れていることから、調理器具の非粘着コーティングや防水製品など、様々な消費財に広く使用されてきました。

しかし近年、環境中への蓄積や人体への健康影響が国際的に懸念されており、多くの国で規制が強化されています。わが国でも、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)に基づき、PFOS及びPFOAの製造・輸入等が原則禁止されており、水道水や公共用水域、地下水内のPFASの暫定目標値も設定されていますが、販売されているミネラルウォーターに関しては特段基準値が設けられていませんでした。今回公表された基準案では、殺菌または除菌を行うミネラルウォーター類において、PFOSとPFOAの合計値として0.00005mg/L(50ng/L)を超えて含有してはならないとされています。

今回の改正案の公表は、PFASの健康への影響について様々な議論がなされている中で、わが国でも規制が強まる方向性を示すものとして、プラネタリーヘルスの観点からも重要な意味を持つものといえます。PFASによる具体的な健康リスクについては必ずしも明らかになっていない部分も多いですが、今後の疫学研究の動向にも注意しながら、適切な規制を設けていくことが期待されます。